減価償却資産の取得価額がわからない場合はどうする?

建物など減価償却資産の取得価額がわからない場合は減価償却費の計上ができません。そこで今回は建物の取得価額がわからない場合の処理方法について解説します。

建物の取得価額がわからない場合の減価償却費の計算方法は?

確定申告のご依頼を受けたケースでよく見受けられるのが建物などの減価償却資産を所有しているにもかかわらず減価償却費が計上されていないケースです。これは単に減価償却費の計算が難しく計算ができていない場合もありますが、そもそも購入時の書類が見当たらず取得価額がわからない場合も多いです。

ではこのような場合は減価償却費を計上できないのでしょうか。
結論から言えばこのような場合でも減価償却費を計上することは可能です。

通常では以下のような方法により建物価額を把握することになりますが、不明な場合は自身で計算して算出する必要があります。

(1) 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されており、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該契約により明らかにされている当該土地等の価額による。

(2) 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されていない場合であっても、例えば、当該土地等及び建物等が建設業者から取得したものであってその建設業者の帳簿書類に当該土地等及び建物等のそれぞれの価額が区分して記載されている等当該土地等及び建物等のそれぞれの価額がその取得先等において確認され、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該確認された当該土地等の価額によることができる。

(3) (1)及び(2)により難いときは、当該一括して取得した土地等及び建物等の当該取得の時における価額の比によりあん分して計算した当該土地等の金額を、当該土地等の取得価額とする。

建物価額の具体的な算出方法については下記で説明します。

消費税額から割り戻して計算する方法

土地付き建物を購入した場合は土地には消費税額がかからず建物にはかかるため記載されている消費税の金額から逆算して建物の価額を算出することができます。また土地価額は差額で求めることができます。

【具体例】
新築一戸建て5,000万円(うち消費税200万円)の場合

手順① 建物価額を計算
    200万円➗10%=2,000万円

手順③ 建物の税込価額を計算
    2,000万円(①)➕200万円(消費税)=2,200万円

手順③ 土地価額を計算
   5,000万円➖2,200万円(②)=2,800万円

なお契約書に消費税額が記載されていないケースは課税事業者となっていない個人が不動産を売却した場合などがあります。その場合は以下のような方法により計算することとなります。

土地と建物の時価により按分する方法

固定資産税評価額などをもとに按分します。

固定資産税評価額とは?

固定資産税評価額とは、固定資産税などの税額を計算するときに利用される基準価額のことをいいます。

固定資産税評価額は市区町村から毎年春頃に送られてくる固定資産税の納税通知書により確認します。この中に課税明細書の「価格」または「評価額」と言う欄があるのでそこで確認します。

※課税標準額とは違うので注意しましょう。

なお課税明細書がない場合は役所で入手できる「固定資産評価証明書」を利用する方法もあります。

「建物の標準的な建築価額表」から計算する方法

最後の方法は国税庁のホームページで公表されている「建物の標準的な建築価額表」を利用する方法です。

建築価額表から構造や建築年をもとに計算していきます。建物の床面積なども必要になりますが、これは「登記事項証明」により確認することができます。

まとめ

今回は建物の取得価額がわからない場合の建物価額の算出方法について解説しました。

建物価額がわからない場合は減価償却費が計上できないため上記のような方法により建物価額を算出するようにしましょう。