ポイント利用時の会計処理は?買い手・売り手の仕訳をわかりやすく解説!

ポイントカードなどを持っていると商品を購入したときにポイントが貯まりますが、このポイントの会計処理は処理方法も複数あり複雑でわかりにくくなっています。
今回はポイントを使用したときの会計処理について買い手側と売り手側に分けて解説します。

買い手側のポイント利用時の会計処理

ポイントの会計処理については、我が国の会計基準等では定められていません。

考え方としては平成20年7月2日に金融庁より公表されている「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」という資料により発行企業について以下の3つの方法が記載されています。


①「ポイントを発行した時点で費用処理」

②「ポイントが使用された時点で費用処理するとともに、期末に未使用ポイント残高に対して過去の実績等を勘案して引当金計上

③「ポイントが使用された時点で費用処理(引当金計上しない)」

実務上は「値引き」として処理する場合と「雑収入」として処理する場合が一般的であるため、以下ではこの2つの方法について説明します。

①「値引き」として処理する場合

例えば10,000円の消耗品を1,000円分のポイントを利用して購入し、「値引き」として処理する場合は現金での支払額により以下のように仕訳をします。

借 方金 額貸 方金 額
消耗品費9,000現金9,000

②「雑収入」として処理する場合

上記と同じく10,000円の消耗品を1,000円分のポイントを利用して購入し、「雑収入」として処理する場合は以下のように仕訳をします。

借 方金 額貸 方金 額
消耗品費10,000現金9,000
雑収入1,000

①の処理の場合は費用として9,000円が計上され、②の処理の場合は費用として10,000円が計上されますが、収入が1,000円あるため相殺すると費用が9,000円となるため、どちらの方法を採用した場合でも利益や税額には影響を与えません。

売り手側の会計処理

売り手側の処理としては「値引き」として処理する場合と「販売促進費」として処理する方法があるため以下ではこの2つの方法について説明します。

①「値引き」として処理する場合

先ほどと同じ10,000円の消耗品を売り上げ1,000円分のポイントが利用された場合の「売上値引」として処理する場合の売り手側の仕訳は以下のようになります。

借 方金 額貸 方金 額
現金9,000売上10,000
売上値引1,000

②「販売促進費」として処理する場合

上記と同じ具体例で10,000円の消耗品を売り上げ1,000円分のポイントが利用された場合、「販売促進費」として処理する場合の売り手側の仕訳は以下のようになります。

借 方金 額貸 方金 額
現金9,000売上10,000
販売促進費1,000

売り手側も買い手側と同様にどちらの処理方法を採用したとしても利益や税額には影響を与えません。

新収益認識基準による影響は?

2021年4月1日以後に開始する事業年度から大会社のような会計監査を受ける会社については、新収益認識基準が強制適用となります。

新収益認識基準とは、「約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が利益を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識すること」で5つのステップを適用して収益を認識します。具体的には以下のようなステップに分かれています。

ステップ1 顧客との契約を識別
ステップ2 契約における履行義務を識別
ステップ3 取引価格の算定
ステップ4 契約における履行義務に取引価格を配分
ステップ5 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識

 従来の会計処理ではポイント未使用分については「ポイント引当金」として処理していましたが、新収益認識基準を適用した場合のポイントの会計処理については以下のようになります。

① 商品を販売したとき

10,000円の消耗品を売り上げ1,000円分のポイントを付与した場合は、商品の価値とポイント価値を按分するため以下の算式により契約負債を認識します。

10,000 × 10,000 ÷(10,000+1,000)= 9,090

借 方金 額貸 方金 額
現金10,000売上9,090
契約負債910

② ポイントが使用されたとき

ポイントが使用されたときは履行義務が充足されたと考えて使用されたポイント分の契約負債を収益として計上することになります。

借 方金 額貸 方金 額
契約負債910売上910

上記のように新収益認識基準は従来の会計処理よりも複雑になっていますが、上場していない中小企業の場合は従来通り企業会計原則により会計処理を行うことが可能です。

まとめ

今回はポイントの会計処理について説明してきました。
近年では決済時のポイント利用が一般的になっていますが、複数ある会計処理のいずれを選択しても利益には影響がありません。ただ社内でポイント使用時の運用ルールを定め、一度決めた会計処理方法は継続して適用するようにしましょう。