不動産所得における事業的規模とは?

不動産等の貸付けは、規模の大小で所得税法上の取扱いが変わる場合があります。このため事業主は自分が行なっている業務が事業的規模かそれ以外かを把握しておく必要があるため、その判断基準などについて説明したいと思います。

事業的規模とは?

所得税法では、「事業」と「業務」という言葉が頻繁に出てきます。「業務」とは営利目的の継続的行為のことをいい、「事業」とは業務を大規模で行なっている場合に使われます。

なお、事業所得の場合はすべて事業的規模で行われていると考え、事業的規模以外の場合は雑所得で申告することとなります。

これに対して不動産所得の場合は、規模の大小により所得が変わることはないため、事業的規模か否かを判定をする必要があります。

事業的規模かどうかの判定基準は?

不動産等の貸付けが事業として行われているかどうかは、社会通念で判断しますが、実務上は以下のような場合には一般的に事業的規模であると判定します。

【5棟10室基準】
①一戸建ての貸家 → 5棟以上
②アパート    → 10室以上
③駐車場     → 50台以上

上記のような判断基準を「5棟10室基準」といいます。ただし、この基準以下であっても収入の規模が大きい場合などは事業的規模と認められるケースもあります。

なお、貸家とアパートの両方を所有している場合は、アパート2室を家屋1棟と換算して判定します。

事業的規模かどうかにより取扱いが異なるものは?

不動産の貸付けが事業的規模かそれ以外かの場合の主な相違点は以下のようなものがあります

取扱い事業的規模事業的規模以外
固定資産等の資産損失全額必要経費に算入資産損失を差し引く前の不動産所得を
限度として必要経費に算入
債権の貸倒損失全額必要経費に算入計上した年分にさかのぼって
所得金額を減額
個別評価貸倒引当金適用あり適用なし
青色事業専従者給与
白色の事業専従者控除
適用あり適用なし
青色申告特別控除最大65万円最大10万円

上記のように事業的規模の場合は、必要経費に算入できる幅が広がるなど有利な取扱いがあります。

なお、青色事業専従者給与や青色申告特別控除については、詳しくは以下のページをご覧ください。

まとめ

不動産を貸付けた場合の事業的規模について説明しました。
事業的規模か事業的規模以外かにより上記のように取扱いに異なる部分があります。確定申告をする際は間違えないように気をつけるようにしましょう。