コンサルタント料の勘定科目と仕訳をわかりやすく解説|税理士が実務の視点から説明

経営改善や集客、業務効率化など、企業や個人事業主がコンサルタントに依頼する場面は年々増えています。しかし、実務の現場では「コンサルタント料の勘定科目はどれが正しいの?」「源泉徴収って必要?」と迷われる方が多いのが実情です。本記事では、税理士が現場の肌感覚を踏まえて、コンサルタント料の勘定科目と仕訳をわかりやすく解説します。
目次
コンサルタント料に使われる主な勘定科目
コンサルタント料は業務内容や依頼の目的によって適切な勘定科目が変わります。実務でよく使用される科目は以下の4つです。
① 外注費
社内の一部業務を外部のコンサルタントに「委託」するケースに最も使われる科目です。
マーケティング支援、経営改善プロジェクト、業務フロー改善など、実務寄りのコンサルティングで採用されることが多いです。
👉 実務では コンサルタント料は外注費で処理するのが最も一般的。
② 支払手数料
振込手数料やサービス利用料で使われる科目ですが、
「コンサルタントのサービス提供に対する対価」と捉え、支払手数料で処理されるケースもあります。
③ 支払報酬料
専門家(弁護士・税理士・コンサルタント等)への報酬として使用することができます。
“専門家色が強いコンサル” の場合に選択されることもあります。
④ 支払顧問料
毎月固定の支払で顧問契約を結んでいる場合に使用します。
顧問型の経営コンサルタント、財務コンサル、集客コンサルなどの月額報酬で使用されることがあります。
コンサルタント料を「外注費」で処理する場合の仕訳
ここから先は、実務で最も多い 外注費で処理するケース を軸に説明します。
特に質問の多い以下の3つを中心に解説します。
- 銀行振込の仕訳
- 源泉徴収が必要な場合の仕訳
- 前払い(前払費用)になった場合の仕訳
① 一般的な銀行振込の仕訳(源泉徴収なし)
法人コンサルタントに支払う場合や、源泉徴収の対象外のケースです。
例:報酬110,000円を銀行振込した場合
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 110,000 | 普通預金 | 110,000 |
② 個人コンサルタントに支払う場合(源泉所得税あり)
個人のコンサルタントに支払う報酬は、原則として源泉所得税の対象になります。
例:報酬100,000円、銀行振込、源泉徴収額を10.21%で計算した場合
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 100,000 | 普通預金 | 89,790 |
| 預り金 | 10,210 |
※源泉所得税を預り金として計上し、後日納付します。
③ コンサル報酬を前払いした場合(前払費用)
契約開始前に料金を支払うケースは非常に多く、実務でも「どのタイミングで費用計上するべきか」は特に相談が多い論点です。
例:1年分のコンサル料 600,000円を事前に振込した場合
支払時
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 600,000 | 普通預金 | 600,000 |
月々のサービス提供に応じて振替をする場合(毎月:600,000 ÷ 12=50,000)
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 50,000 | 前払費用 | 50,000 |
👉 実務では「一括で外注費にしてしまうミス」が非常に多い部分。
月次残高の精度や決算書の信頼性にも影響するため注意が必要です。
実務でよくあるトラブルと判断ポイント
① コンサルタント料を“雑費”にしてしまう
実務の現場では、コンサルタント料を「雑費」で処理してしまうケースが少なくありません。しかし、雑費は本来どの科目にも当てはまらない支払に使用する科目であり、コンサルタント料とは性質が異なります。
② 源泉徴収の漏れ
個人コンサルタントへの支払いで源泉徴収を忘れ、後からまとめて納付するケースも実務ではよくあります。
支払の都度、源泉所得税を控除し、期限までに納付する運用を整えておくことが重要です。
③ 前払費用の処理漏れ
半年分・1年分をまとめてお支払いされるケース自体は珍しくありませんが、その際に 「すべて外注費として処理してしまう」 という誤りは実務でもよく見受けられます。
この部分は税務調査でも重点的に確認されるポイントのため、特に注意が必要です。
④ 契約内容によって勘定科目を統一する
同じコンサルタントへ毎月支払っている場合は、外注費で統一するなど、科目を揃えておくことが非常に重要です。
実務でも「毎月支払っているのに、月ごとに科目がバラバラ」というケースは珍しくありません。
このような不整合は 税務調査で必ず確認されるポイント ですし、月次・年次の数字の見え方にも影響するため注意が必要です。
まとめ
コンサルタント料は、依頼内容によって勘定科目が変わり、個人コンサルへの支払いは源泉徴収の取扱いにも注意が必要です。また、前払いのケースでは前払費用の処理が欠かせません。迷う部分の多い科目ですが、正しく処理すれば会計資料が見やすくなり、経営判断の質も向上します。当事務所(大阪市)では実務に即した仕訳や処理方法についてのご相談も承っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

著者紹介
「小さな会社と個人事業主の専門税理士」、吉川拓税理士事務所の吉川です。
10年以上にわたり、小規模事業者や個人事業主の皆さまを税理士としてサポートしてきました。
現在は大阪市で開業していますが、オンライン対応により地方や離島を含め全国対応しております。
会計や税金が苦手な方にも、専門用語を使わず分かりやすく、親身に寄り添うことを心がけています。
趣味はトイプードル、コーヒー、読書。お気軽にご相談ください。

