税理士報酬の勘定科目と仕訳|税理士が実務経験をもとにわかりやすく解説

税理士報酬(費用)の勘定科目と仕訳|税理士が実務経験をもとにわかりやすく解説

税理士報酬は、事業を運営するうえで発生する代表的な費用の一つです。正しい勘定科目で処理し、適切に仕訳を行うことで、帳簿が整理され、決算書や申告書の作成もスムーズになります。また、源泉徴収や消費税の扱いを誤ると、税務上のトラブルにつながることもあります。本記事では、実務経験に基づき、税理士報酬の勘定科目や仕訳のポイントをわかりやすく解説します。

税理士報酬の勘定科目

税理士報酬は性質によって以下の勘定科目で処理されることが一般的です。

  • 支払手数料
    一般的には税理士報酬の処理にこの科目を使用することが多く、サービス利用料や業務委託費と区別して、会計上わかりやすく整理する目的で用いられます。
  • 支払報酬料
    顧問契約や決算・申告書作成など、税理士業務の対価として支払う金額は、こちらの科目で処理することもあります。
  • 業務委託費
    税理士に特定の業務を委託した場合には、業務委託費として処理することもあります。

実務上は、科目を社内で統一しておくことが大切です。科目の統一があれば、帳簿の見やすさが向上し、決算や税務調査時もスムーズになります。また、支払先や契約形態に応じてあえて科目を分けることで、報酬の性質や用途が明確になり、経理上の混乱を防ぐことも可能です。

税理士報酬の仕訳例

税理士報酬の仕訳は、契約形態や支払い方法によって若干変わります。仕訳例を整理すると理解しやすいでしょう。

1. 月次顧問報酬を銀行振込で支払った場合

定額の顧問料を銀行振込で支払う場合の例です。

仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
支払手数料55,000普通預金55,000

2. 個人の税理士への報酬で源泉所得税がある場合

源泉徴収義務のある法人などが個人の税理士に報酬を支払う場合、その報酬は源泉所得税の対象となるため、支払時に所定の税額を差し引いてその税額を納付する必要があります。

  • 100万円以下の場合支払金額×10.21% を源泉徴収
  • 100万円超の場合(支払金額 − 100万円) × 20.42% + 102,100円 を源泉徴収

仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
支払手数料55,000普通預金49,895
預り金(源泉所得税)5,105

3. 税理士報酬の消費税と源泉徴収の関係

税理士報酬は通常課税仕入れとして仕入税額控除が可能です。適格請求書を確認し、適切に仕訳しておくことで消費税申告もスムーズになります。

税理士報酬の源泉徴収においては、消費税を含めるかどうかが実務上よく質問されるポイントです。これについて、国税庁は次のように示しています。

報酬・料金の額の中に消費税および地方消費税の額(以下、「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において、報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

引用元:国税庁 No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金

つまり、国税庁の取扱いによれば、請求書に「報酬」と「消費税額」が明確に区分して記載されている場合には、報酬部分だけを源泉徴収の対象とすることが認められています。

実務で押さえておきたい源泉徴収と消費税のポイント

1. 源泉徴収の確認

法人など源泉徴収義務者が税理士報酬を個人の税理士に支払う場合は、源泉所得税の徴収が必要です。支払う側の会社などが源泉徴収を行い、原則として翌月10日までに納付する義務があります。

なお、従業員が少ない中小企業などの場合、源泉所得税の納付について「納期の特例」を利用できるケースがあります。これは、通常は毎月行う納付を、年2回(7月と翌年1月)にまとめて納付できる制度です。

税理士報酬の源泉徴収税額もこの特例の対象に含まれるため、資金繰りや事務負担の軽減につながります。ただし、特例を利用するためには税務署への申請(源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書)が必要となります。

2. 課税仕入れとしての扱い

税理士報酬は通常消費税法上の「課税仕入れ」に該当します。したがって、適格請求書(インボイス)が交付されている場合には、仕入税額控除の対象となります。

消費税の計算を正しく行うためには、請求書に記載されたインボイス番号や消費税額の明細を確認し、適切に仕訳しておくことが重要です。

まとめ

税理士報酬は、事業運営上身近な経費であり、勘定科目や仕訳の扱いを理解しておくことが重要です。

  • 科目の統一と一貫性を保つ
  • 源泉徴収や課税仕入れのルールを正確に確認
  • 請求書や領収書など証憑書類の管理を徹底

これらを押さえておくことで、帳簿や決算書が整理され、申告作業もスムーズに行えます。当事務所では、大阪市内の法人・個人事業主の税務処理や仕訳の判断について、実務に即したサポートを行っています。お気軽にご相談ください。