自分で記帳しているけど、このやり方で大丈夫?税理士がチェックすると何が違うのか

「自分で会計ソフトに入力しているんですが、税理士がチェックすると何が違うんですか?」
顧問相談のとき、よくいただく質問です。
会計ソフトも使いやすくなりましたし、
ネットで調べれば仕訳の例もすぐ見つかります。
そのため、
- とりあえず入力はしている
- 申告も一応できている
- でも、このやり方でいいのか少し不安
という状態の方が多い印象です。
実務で帳簿を見ると、
大きく分けて2つのパターンがあります。
1つは、かなり細かく帳簿をつけているケース。
もう1つは、なんとなく入力しているケース。
そして実際には、
後者の方が圧倒的に多いです。
ただ、どちらの場合でも、
税理士がチェックするときに見ているポイントは意外と共通しています。
今回はそのあたりを、実務でよく見る場面ベースで書いてみます。
仕訳の正解より先に「数字の意味」を見ている
税理士が帳簿を見るとき、
仕訳の正誤を細かくチェックしていると思われがちです。
実際、最終的にはそこも含めて細かく確認しています。
ただ、いきなり一つ一つの仕訳から見ていくかというと、
少し順番が違います。
まず全体を見て、
この帳簿で数字の意味が分かるかどうか
を確認してから、
必要なところを細かく見ていく、という流れになります。
例えば、年商800万〜1,200万円くらいの個人事業で、
こんな帳簿をよく見ます。
- 売上は発生ベースで計上している
- クレジット売上なども計上している
- ただし、入金との対応は取っていない
この状態だと、
仕訳自体は一見それっぽく並んでいることもあるのですが、
売掛金と入金の対応を取っていないため、結果として帳簿は正しく機能していません。
実際に試算表を見ると、
- 売上の計上タイミングは一応揃っている
- ただ、売掛金の残高がずれている
- 入金との対応関係が分からない
という状態になっていることがあります。
このとき問題になるのは、
単純な仕訳ミスというより、
売上と売掛金の管理の仕方です。
- 売上は計上したあと、どう消し込むのか
- 入金と売掛金をどう対応させるのか
- 複数の売上に対して一括で入金された場合に、どう振り分けるのか
売掛金は計上した時点で終わりではなく、
入金と対応させて消し込むところまでがセットです。
ここが曖昧なままだと、
帳簿の残高のズレがどんどん大きくなってしまいます。
細かい帳簿でも、別のところで詰まることがある
逆に、かなり丁寧に帳簿をつけている方もいます。
例えば、
- 取引を細かく分解して入力している
- 領収書の中身でさらに細かく分類している
- 勘定科目もかなり細かく分けている
こういう帳簿です。
数字はきれいですし、
仕訳もかなり正確です。
ただ、相談のときによく出てくるのが、
「毎月かなり時間かかってます」
という話です。
例えば、年商700万〜1,000万円くらいの事業で
毎月の記帳に数時間かかっているケースもあります。
ここで考えるのは、
この作業量で続けられるか
です。
記帳は1回で終わるものではなく、
毎月ずっと続きます。
なので、
- どこまで細かくやるか
- どこはまとめるか
- どこで割り切るか
このバランスを見ます。
正直、ここで無理をする人が多いです。
税務上は問題ないけれど、
作業としては重すぎる帳簿になっていることがあります。
「税務上問題ない」と「あとで困らない」は別
もう一つ、実務でよく見るのが、
一応処理はできているけれど、構造的に分かりにくい帳簿です。
例えば、個人事業でよく出てくるのが、
事業口座と個人口座が混ざっているケースです。
- 事業口座から生活費を引き出す
- 個人口座で経費を支払う
こういった処理は、個人事業では自然に起こりますし、
それ自体が誤りというわけではありません。
ただ、
- お金の流れが見えにくくなる
- 利益と資金の感覚がズレる
- 後から内容を思い出せなくなる
といった形で、帳簿としては分かりにくくなっていきます。
結果として、
- 事業主貸・事業主借が大きく動く
- 何の支払いだったか説明に時間がかかる
といった状態になりやすいです。
なので私は、
「この規模や内容であれば事業用口座とプライベート用口座は分けておいた方が楽です」
とお伝えすることが多いです。
私がチェックするときの一つの軸
いろいろ書きましたが、
私が帳簿を見るときの軸はわりとシンプルです。
この記帳方法で、3年後も回っているか。
例えば、
- 今は年商600万円だけど
- 1,200万円くらいになったとき
今の帳簿の形で耐えられるか。
あるいは、
- 作業量が増えすぎないか
- ミスが出やすい構造になっていないか
- 税務調査のとき説明できるか
このあたりを見ます。
逆に言うと、
仕訳を細かく正確にすることよりも、帳簿として機能しているかの方が重要です。
ただ、
「このまま続けると、どこかで詰まりそうだな」
という帳簿は、
やはり早めに整理した方がいいです。
最後に
税理士がチェックすると何が違うのか。
ポイントとしては、
仕訳の正誤を確認するのはもちろんですが、それに加えて記帳の設計まで見ています。
- この帳簿で数字の意味が分かるか
- 作業として続けられるか
- 事業規模が変わっても回るか
このあたりです。
当事務所では記帳代行は行っておらず、
ご自身で記帳されている方との顧問契約のみ対応しています。
そのため、チェックのときは
- 仕訳の内容を確認しながら
- 記帳の考え方も一緒に整えていくこと
を重視しています。
正直、仕訳だけ整えても、
考え方が曖昧なままだと同じ迷いがまた出てきます。
「入力はしているけれど、
このやり方でいいのか分からない」
そういう段階で相談いただくのが、
実は一番帳簿を整理しやすいタイミングだったりします。

著者紹介
「小さな会社と個人事業主の専門税理士」、吉川拓税理士事務所の吉川です。
10年以上にわたり、小規模事業者や個人事業主の皆さまを税理士としてサポートしてきました。
現在は大阪市で開業していますが、オンライン対応により地方や離島を含め全国対応しております。
会計や税金が苦手な方にも、専門用語を使わず分かりやすく、親身に寄り添うことを心がけています。
趣味はトイプードル、コーヒー、読書。お気軽にご相談ください。

