予定納税の勘定科目と仕訳のポイント|法人・個人事業主別に実務目線で解説

予定納税の勘定科目と仕訳のポイント|法人・個人事業主別に実務目線で解説

事業を行っていると、「予定納税」の通知が届いた際に、どの勘定科目で処理すればよいのか迷うことがあります。法人と個人事業主では会計処理の考え方が異なるため、同じ予定納税でも仕訳が変わる点は注意が必要です。大阪市で多くの事業者様をサポートしてきた実務経験を踏まえ、本記事では、法人・個人事業主それぞれの予定納税について、現場で使われている勘定科目と仕訳を整理します。

法人・個人事業主で異なる予定納税の考え方と勘定科目

予定納税は、前年の税額などを基準として、あらかじめ一定額を納付する仕組みです。
会計処理上は、「どの勘定科目で管理するか」が実務上のポイントになります。

法人の場合に使われる勘定科目

法人の予定納税では、次の2つの勘定科目が実務で使われています。

  • 法人税等
  • 仮払法人税等

どちらを使うかは、会計方針や処理の分かりやすさを重視するかどうかによって選ばれており、小規模法人ではシンプルな処理を、大きめの法人では仮払管理を採用する傾向があります。

個人事業主の場合に使われる勘定科目

個人事業主の場合、所得税の予定納税は事業と切り離して管理するため、事業主貸を使用するのが一般的です。
大阪市内の個人事業主の方でも、この点で迷われているケースは少なくありません。

予定納税の具体的な仕訳例(法人・個人事業主別)

ここでは、実務でよく使われる仕訳をケース別に見ていきます。
※以下は代表的な例で金額は一例です。

【法人】ケース①「法人税等」で処理する場合

たとえば、法人税の予定納税として150,000円を普通預金から支払ったケースです。

支払時の仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
法人税等150,000普通預金150,000

決算時には、確定した法人税額と予定納税額を整理し、差額を未払法人税等として計上します。
処理がシンプルなため、会計入力をなるべく簡潔にしたい法人で採用されやすい方法です。

【法人】ケース②「仮払法人税等」で処理する場合

同じく、予定納税150,000円を支払ったケースを想定します。

支払時の仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
仮払法人税等150,000普通預金150,000

決算時の仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
法人税等400,000仮払法人税等150,000
未払法人税等250,000

予定納税額と確定税額の関係が明確になるため、税額管理を重視する法人ではこちらの処理が選ばれることが多い印象です。

【個人事業主】所得税の予定納税を支払った場合

個人事業主が、7月に所得税の予定納税として200,000円を支払ったケースです。

支払時の仕訳例

借 方金 額貸 方金 額
事業主貸200,000普通預金200,000

所得税は事業の必要経費には該当しないため、帳簿上は「事業主貸」として処理します。
事業用口座から支払っている場合でも考え方は同じで、事業と個人を分けて管理するという意味合いでこの勘定科目を使います。あらかじめ事業主貸で処理しておくことで、確定申告時の調整や確認がしやすくなります。

実務で多い質問・処理上の注意点

ここからは、実際の現場でよく見られるポイントを整理します。

法人で処理方法が毎年変わってしまう

法人の場合、前年は「法人税等」、今年は「仮払法人税等」と、処理方法が自然と変わってしまうことがあります。
特に、担当者が変わったタイミングや、会計ソフトを入れ替えた際に起きやすい傾向です。

大きな誤りになることは少ないものの、決算時に内訳が追いにくくなったり、前年比較がしづらくなったりするため、一度決めた処理方法は継続することが実務上は重要になります。

予定納税の通知内容を十分に確認していない

予定納税の通知は毎年届くため、内容を十分に確認しないまま処理が進んでしまうケースがあります。
実務では、通知書や納付書を確認せず、金額の内訳や回数を意識しないまま入力してしまうことで、後から「処理の意味が分からなくなった」「どの税目の支払いだったか迷う」といった事態につながることがあります。

予定納税額は申告内容や税額の状況に応じて見直されるため、支払った事実だけでなく、その位置づけを確認しておくことが大切です。

個人事業主で処理があいまいになっている

個人事業主の場合、予定納税は売上や経費と直接結びつかないため、記帳を後回しにしてしまうことがあります。
結果として、年末や確定申告前にまとめて処理し直すことになり、内容の確認に時間がかかってしまうケースも少なくありません。

支払時点で事業主貸として処理しておけば、後から見返したときにも分かりやすく、申告作業もスムーズになります。

まとめ

予定納税は、法人・個人事業主で使う勘定科目や管理方法が異なるため、処理を誤ると後から修正が必要になることがあります。重要なのは、立場に応じた勘定科目を選び、毎年同じ考え方で処理を続けることです。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することで、決算時の手間や不安を減らすことができます。大阪市で会計・税務のサポートをお探しの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。