プリンター購入時の勘定科目と仕訳を税理士が徹底解説|10万円・20万円・30万円の判断基準と償却資産税まで完全ガイド

プリンターは事業に必須の設備ですが、「これは消耗品費? それとも固定資産?」と迷われる方がとても多い科目です。特に10万円・20万円・30万円の金額区分は、実務でも判断が分かれやすく、処理を間違えると償却資産税の申告漏れにもつながります。本記事では、大阪市の事業者さまから日々寄せられるご相談を踏まえつつ、税理士の視点でわかりやすく解説します。
プリンター購入時の会計処理の概要と償却資産税について
■ 1. プリンターは「消耗品費」か「工具器具備品」で処理する
プリンターは「工具器具備品」に該当しますが、金額などの条件によっては「消耗品費」として処理できることがあります。
● 購入費用が10万円未満の場合
- 購入価格が 10万円未満の場合や使用可能期間が1年未満の場合は、少額減価償却資産として全額を経費にすることができるため「消耗品費」として処理が可能です。
● 購入費用が10万円以上20万円未満の場合
- 購入価格が 10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として3年間に分割して経費にすることができるため「工具器具備品」や「一括償却資産」として処理が可能です。
● 購入費用が30万円以上の場合
- 購入費用が30万円以上の場合は、一括で経費にすることができないため「工具器具備品」として計上し、税務上の利用可能な年数5年間(耐用年数)で費用化します。
● 購入費用が10万円以上30万円未満の場合
- 青色申告をしている中小企業者で購入費用が10万円以上30万円未満の場合は、少額減価償却資産の特例(租税特別措置法67の5)を適用することが可能であるため、年間300万円までは一括で経費にすることができます。このため30万円未満の場合、一括でその会計年度の経費としている企業が多くあります。
■ 償却資産の申告対象になるの?
償却資産税(地方税)は固定資産に課される税金ですが、上記で区分したプリンターが申告対象になるかどうかは以下のように判断します。
- 10万円未満で消耗品費として処理 → 申告対象外
- 10万円以上20万円未満で一括償却資産として処理→ 申告対象外
- 10万円以上30万円未満で特例により全額経費 → 申告対象
- 減価償却資産として計上したもの → 申告対象
※上記のように少額減価償却資産の特例を使って全額を経費とした場合でも償却資産の申告は必要となるため、どの区分で処理をするか慎重に判断する必要があります。
プリンター購入時の具体的な仕訳例
ここからは、実務で最も迷う 「仕訳」 を4つの金額帯で整理します。
会計事務所として実際にご相談が多い内容をベースにまとめています。
① 10万円未満:消耗品費として処理(基本形)
●仕訳例
プリンター 89,000円(税込)を購入した場合
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 89,000 | 現金 | 89,000 |
●ポイント
・全額を一括で損金に算入可能
・償却資産税の申告対象外
② 10万円以上20万円未満:一括償却資産(3年均等)
●仕訳例
プリンター 165,000円(税込)を期首に購入した場合
購入時:
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 一括償却資産 | 165,000 | 現金 | 165,000 |
決算時(3年均等償却):
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 55,000 | 一括償却資産 | 55,000 |
●ポイント
・「工具器具備品」での処理も可能
・償却資産税の申告対象外
③ 10万円以上30万円未満:少額減価償却資産の特例
●仕訳例
プリンター 275,000円(税込)を期首に購入した場合(減価償却費として処理する方法を採用した場合)
購入時:
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 275,000 | 現金 | 275,000 |
決算時:
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 275,000 | 工具器具備品 | 275,000 |
●ポイント
・青色申告法人で中小企業者が前提
・年間300万円まで全額費用化可能
・法人の場合、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))の添付が必要
・個人事業主の場合、租税特別措置法第28条の2を適用する旨の記載が必要
・償却資産税の申告が必要
・消耗品費として処理する方法もあるが、他の消耗品費に埋もれてしまう可能性があるため注意が必要
④ 30万円以上:減価償却資産(通常の固定資産)
●仕訳例
プリンター 550,000円(税込)を期首に購入した場合
購入時:
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 550,000 | 現金 | 550,000 |
決算時:
| 借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 110,000 | 工具器具備品 | 110,000 |
●ポイント
・5年償却(通常)
・償却資産税の申告が必要
実務で多い質問や注意点
ここでは、当事務所に実際によく相談される内容をまとめています。
①特例があるのに固定資産にされてしまっている
経理担当者が固定資産処理を選んだために、本来は全額経費にできたのに5年償却になってしまうという例もあります。
これは税務上の誤りではなく、処理方法の選択によるもので、現場でよく見かけるパターンです。
②償却資産税の申告漏れ
「固定資産にしたのに償却資産税の申告がされていない」という相談がとても多いです。
上記のように処理方法によって申告の有無が変わってくることが混乱の元になっているため、申告が必要がどうか整理しておくことが大切です。
③プリンターが壊れて買い替えた場合の「除却損」を忘れる
古いプリンターを廃棄する際、帳簿上の残高をそのまま放置してしまうケースです。
・帳簿残高 → 除却損として費用化する必要がある
見落とすと資産台帳と実際の残高がズレるため、よく修正処理が発生する項目です。
まとめ
プリンターは金額帯によって「消耗品費」「固定資産」「特例適用」など会計処理が大きく変わります。特に10万円・20万円・30万円の区分は実務でも判断が分かれやすく、償却資産税の影響もあるため注意が必要です。大阪市で事業をされている方で処理に迷う場合は、当事務所でもご相談を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

著者紹介
「小さな会社と個人事業主の専門税理士」、吉川拓税理士事務所の吉川です。
10年以上にわたり、小規模事業者や個人事業主の皆さまを税理士としてサポートしてきました。
現在は大阪市で開業していますが、オンライン対応により地方や離島を含め全国対応しております。
会計や税金が苦手な方にも、専門用語を使わず分かりやすく、親身に寄り添うことを心がけています。
趣味はトイプードル、コーヒー、読書。お気軽にご相談ください。

