倒産防止共済の勘定科目と仕訳を徹底解説|保険料・保険積立金どちらで処理すべきかを税理士が実務目線で解説

仕訳・会計処理

倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、中小企業・個人事業主にとって“もしものとき”に資金繰りを支える重要な制度です。経費になる制度として有名ですが、実務では「勘定科目は保険料?保険積立金?」「解約したときの仕訳は?」といった質問が頻繁にあります。本記事では、大阪市の税理士事務所としての実務経験をふまえ、現場で迷いやすいポイントをわかりやすく整理します。

倒産防止共済の基本と勘定科目の考え方

■ 倒産防止共済の概要

倒産防止共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業基盤整備機構が運営する制度で、取引先が倒産した場合に無担保・無保証で掛金の10倍まで借入ができるものです。
掛金は 月額5,000円〜20万円 の範囲で自由に設定でき、最大で800万円まで積み立て可能です。

実務でも、資金繰りに敏感な経営者ほど加入される印象があります。「いざという時に使える安心感」は経営現場で非常に強いです。

■倒産防止共済の勘定科目は「保険料」か「保険積立金」が基本

倒産防止共済の掛金は費用処理が認められているため、実務では次のいずれかの科目で仕訳するのが一般的です。

  • ① 保険料(費用処理)
  • ② 保険積立金(資産計上)

どちらの科目を使うかは、会社の会計方針や内部管理の考え方によって異なります。

■どちらを使うべきか?

倒産防止共済は「共済」であり、民間の保険契約とは性質が異なります。しかし、掛金は費用として損益計算書に計上できるため、会計上も保険料という費用として管理した方が、日常の経理処理や帳簿の確認がしやすく、実務上扱いやすいケースが多く見られます。

一方で、毎月の掛金を資産として積み上げて管理したい場合や、内部管理上「積立金としてストックを見える化したい」「長期的な共済資産として把握したい」といったニーズがある場合には 保険積立金 を使うこともあります。

結論としては、どちらが正しい・誤りというよりも、会社としてどのように管理したいかを基準に科目を選択するのが実務上の判断です。例えば、「会計上の資産として積み立てを明確に管理したい」のか、「費用として処理し、税務上の損金算入を優先したい」のかによって科目が変わります。また、金融機関に対して決算書や申告書を提示する際に、どのように見せたいかという視点も重要です。資産計上か費用計上かで見え方が変わるため、融資や取引先との信頼関係を意識して選択することも実務上のポイントです。

大阪の中小企業でも、経理担当者の引き継ぎ状況や管理方法に応じて、どちらの方法も採用されているのが現場の実感です。

倒産防止共済の勘定科目別仕訳例(保険料・保険積立金)

ケース①:掛金を保険料(費用)で処理する場合

例:毎月30,000円を銀行引落しで支払った

借 方金 額貸 方金 額
保険料30,000普通預金30,000

※「保険料」として当期の費用で処理します。

ケース②:掛金を保険積立金(資産)で処理する場合

● 例:毎月30,000円を銀行引落しで支払った

借 方金 額貸 方金 額
保険積立金30,000普通預金30,000

※「保険積立金」という資産科目で計上されるため、貸借対照表に積み上がっていきます。

貸付・解約時の仕訳|実務で迷うポイント

倒産防止共済は「掛金を払うとき」よりも「借り入れたとき」や「解約するとき」に迷う方が多い制度です。
ここからは、実務でよく相談される流れに沿って解説します。

① 借り入れたときの会計処理

● 例:200万円を借り入れた

借 方金 額貸 方金 額
普通預金2,000,000借入金2,000,000

※金融機関からお金を借り入れたときと同様に「借入金」として処理します。

② 解約して解約手当金を受け取ったときの会計処理

倒産防止共済を解約し、共済金を受け取った場合の仕訳は、これまでの会計処理方法によって異なります。

1. 「保険料」として費用処理していた場合

掛金を費用として処理していた場合は、受け取った解約手当金は原則として雑収入として計上します。

● 例:解約手当金として50万円受け取った場合

借 方金 額貸 方金 額
普通預金500,000雑収入500,000

※これまで費用として処理していた掛金分は、すでに損金や必要経費として申告済みのため、受け取った解約手当金は雑収入として計上します。

2. 「保険積立金」として資産計上していた場合

掛金を資産科目「保険積立金」として計上していた場合は、解約金を受け取ったときにその資産を取り崩して処理します。

● 例:解約手当金として50万円受け取った場合

借 方金 額貸 方金 額
普通預金500,000保険積立金500,000

※積立金として計上していた場合、保険積立金として資産計上されていた額を減額処理します。

倒産防止共済の損金算入に必要な書類(法人・個人)

倒産防止共済の掛金は、法人では損金、個人事業主では必要経費として算入できます。しかし、これを申告で反映させるには、所定の書類への記入・添付が必要です。

法人の場合

法人が掛金を損金算入する場合、確定申告書に次の書類を添付します。

  • 特定基金負担金等損金算入明細書(別表10(7))
    掛金の額や適用条項などを記載します。
  • 適用額明細書
    税法上の条項番号、区分、算入額などを記入します。

なお、掛金を一旦資産として計上している場合は、損金算入にあたって税務上の調整が必要になります。

個人事業主の場合

個人事業主が掛金を必要経費として申告する場合は、次の書類を確定申告書に添付します。

  • 特定基金負担金等必要経費算入明細書
    掛金の金額等を記入します。

個人事業主では、法人のような税務調整は不要です。掛金は費用として直接計上することで、申告に反映されます。

まとめ

倒産防止共済は、掛金を「保険料」として費用処理するか、「保険積立金」として資産処理するかによって会計処理が大きく変わります。また、解約時・貸付時には仕訳が複雑になり、実務でも迷いやすいポイントです。制度を正しく理解しておくことで資金繰りや節税に効果的に活用できます。大阪市で倒産防止共済の処理にお困りの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。