スポーツジム会費の勘定科目と仕訳|税理士が実務の視点から解説

スポーツジム会費の勘定科目と仕訳まとめ|税理士が実務の視点から解説

健康志向の高まりにより、スポーツジムやフィットネスクラブを利用する経営者や従業員が増えています。それに伴い「ジムの会費は経費にできるのか?」「福利厚生費として処理してよいのか?」といった質問を受ける機会も増えました。今回は、税理士として実務で感じる注意点を交えながら、スポーツジム会費の勘定科目や仕訳についてわかりやすく解説します。

スポーツジム会費は福利厚生費になるのか?

福利厚生費としての基本的な考え方

スポーツジムの会費を経費にする場合、一般的には「福利厚生費」として処理します。福利厚生費とは、従業員の健康維持やモチベーション向上を目的とした支出であり、給与以外の形で提供される従業員サービスの一つです。
実際、大阪市内の顧問先でも「社員の健康促進」を理由に法人契約でジムを導入し、福利厚生費として処理しているケースがあります。健康管理は労働生産性や医療費削減にもつながるため、企業にとってもメリットが大きいといえるでしょう。

個人事業主と法人での違い

  • 個人事業主の場合
    個人事業主本人のジム会費は、残念ながら必要経費になりません。福利厚生は「従業員に提供するもの」であり、事業主本人はその対象に含まれないためです。家族従業員も原則同じ扱いです。ただし、屋号や事務所名義で契約し従業員が利用する分については必要経費として認められる可能性があります。
  • 法人の場合
    法人は会社と役員が形式的に別人格であるため、役員や従業員が公平に利用できる体制が整っていれば福利厚生費として処理できる可能性が高まります。たとえば「法人会員」として契約し、全従業員に利用機会がある状態であれば税務上も認められやすくなります。
    ただし注意が必要なのが、いわゆる「1人社長」の会社です。形式上は法人と役員が別人格であっても、実態としては同一人物しか利用していないため、福利厚生費とは認められにくく、給与として扱われる可能性が高いです。給与扱いになると法人税の損金にできないだけでなく、役員本人の所得税・住民税も増えてしまうため、実務上は慎重な判断が求められます。

給与扱いとなるリスク

問題となるのは、実際に「特定の役員や従業員しか利用していない」場合です。この場合、福利厚生費としては認められず「給与」として課税される可能性があります。

給与扱いになると、以下のような不利益があります:

  • 法人税法上:役員の場合、定められた役員給与以外は損金算入できないため、会社の経費にできず法人税が増える。
  • 所得税法上:役員本人や従業員本人にとっては給与課税されるため、所得税や住民税の負担が増える。

このように、法人・個人の双方に税負担が発生する可能性があるため、実務上は「誰でも利用できる制度設計」が不可欠です。法人会員契約や利用規程の整備、利用状況の記録など、形式と実質の両面を揃えておく必要があります。

スポーツジム会費の仕訳例

福利厚生費として処理する場合(法人契約)

借 方金 額貸 方金 額
福利厚生費10,000普通預金10,000

前払費用となる場合(年払い契約)

借 方金 額貸 方金 額
前払費用120,000普通預金120,000

※翌月以降、月割りで福利厚生費に振り替える仕訳を行います。

実務でのチェックポイント

  • 契約名義が法人名義、個人事業主の場合は屋号や事務所名義になっているか
  • 利用対象が全社員であるか
  • 利用規程が整備されているか
  • インボイス番号・消費税額の記載を確認しているか

こうした点を満たしていないと、福利厚生費としての処理や課税仕入としての処理が難しくなり、税務リスクが高まります。

実務での注意点とトラブル事例

よくある失敗例

  • 代表者1人だけが利用していた → 給与認定され法人税・所得税ともに増税。
  • 個人会員契約を会社経費で精算 → 福利厚生費ではなく給与として否認。

実務上の工夫

  • 法人会員として契約し、従業員全体が公平に利用できる仕組みにする。
  • 利用規程を作成し、全社員に周知する。
  • 利用履歴や利用明細などを残しておく

実際に大阪市内の顧問先でも、利用規程を整備して全社員が使える形をとることで、税務調査で福利厚生費として認められた事例があります。こうした「形式」と「実質」の両方を揃えることが、税務署に説明する際の安心材料になります。

まとめ

スポーツジムの会費は、法人契約で全社員が利用できる場合に「福利厚生費」として処理できますが、特定の役員のみが実際に利用しているような場合は給与課税となり、法人税・所得税双方で負担が増えてしまいます。形式だけでなく実質を整えることが大切です。当事務所(大阪市)では、福利厚生費や役員給与の税務判断についてもサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。