固定資産税の仕訳と勘定科目の基本|税理士が実務の判断基準をわかりやすく解説

会社や個人事業を営んでいると、毎年5月頃に自治体から「固定資産税の納税通知書」が届きます。事業用の建物や土地、駐車場や店舗などに対して課税されるため、多くの経営者にとって非常に身近な税金といえるでしょう。
この記事では、固定資産税の勘定科目や仕訳の基本を整理しつつ、実務での注意点や税理士としての判断基準について解説します。大阪市内で顧問先を多数サポートしている当事務所の経験を踏まえ、できるだけ実務の現場感が伝わるようにまとめました。
目次
固定資産税の勘定科目と仕訳の基本
固定資産税とは?
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物、家屋などを所有している人に対して課される地方税です。納付先は市町村で、納税通知書に記載された金額を年4回に分けて支払うのが一般的です。
勘定科目はどうする?
固定資産税を処理するときの勘定科目は、以下のように整理できます。
- 租税公課→ 固定資産税は基本的に「租税公課」で処理します。法人・個人ともに、最も一般的な勘定科目です。
- 事業用と家事用の按分→ 個人事業主が自宅兼事務所を使っている場合、固定資産税の全額を経費にすることはできません。事業用割合に応じて経費化する必要があります。例えば自宅全体の30%を事業に使っていれば、固定資産税の30%だけを経費とします。
仕訳例
たとえば、納税通知書に基づいて100,000円を支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 100,000 | 現金預金 | 100,000 |
もし自宅兼事務所の場合で、事業割合が30%なら次のようになります。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 30,000 | 現金預金 | 100,000 |
事業主貸 | 70,000 |
経費に計上するタイミングと税理士としての判断基準
原則は「賦課決定ベース」
固定資産税は、自治体が納税通知書を発行した時点で課税額が確定します。したがって、原則としては「納税通知書が届いた日(賦課決定日)」に費用計上するのが会計処理の基本です。
- 賦課決定ベースでの仕訳例(年間課税額 400,000円、4期分割納付の場合)
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 400,000 | 未払金 | 400,000 |
その後、実際に納付した際に「未払金」を減額していきます。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
未払金 | 100,000 | 現金預金 | 100,000 |
実務では「支払日ベース」も多い
ただし実務の現場では、実際に支払った日ベースで処理するケースも少なくありません。会計処理をシンプルにしたい事業者にとっては、支払時点で仕訳するほうが分かりやすいからです。大阪市内の顧問先でも、支払日ベースで処理を継続しているケースが多く見られます。
税理士としての判断基準
- 原則は賦課決定ベース
- 簡便的に支払日ベースも可
- 重要なのは処理方法を継続すること
税務署としては、どちらの処理方法を選んでも、毎年一貫していれば大きな問題になることはほとんどありません。ただし、年度ごとに処理方法を頻繁に変えると比較が難しくなり、税務署から不自然に見られる可能性があるため注意が必要です。
実務での注意点とよくある失敗例
① 家事按分を忘れるケース
特に個人事業主の方に多いのが、「自宅兼事務所の固定資産税を全額経費にしてしまう」ケースです。税務調査では必ず確認されるポイントですので、必ず事業用割合に応じて計算しましょう。
② 固定資産税以外と混同するケース
不動産を持っていると、固定資産税のほかに都市計画税が同じ納付書に記載されています。これも「租税公課」として同様に処理し、科目を分ける必要はありません。ただし、管理費や修繕積立金といった支払いと混同してしまうこともあり、仕訳の間違いにつながりやすい点には注意が必要です。
③ 固定資産税の納付スケジュールと資金繰りの注意点
市町村によって異なりますが、大阪市では固定資産税の納付は4月・7月・12月・2月の年4回に分かれています。この納付スケジュールを軽視して資金繰りを見落とすケースは少なくありません。特に12月納付は賞与や仕入代金の支払いと重なることが多く、資金不足を招きやすいため注意が必要です。 実際の処理では、経費計上のタイミングだけでなく、納付スケジュールを踏まえてキャッシュフローを管理することが、税務と経営の両面で重要なポイントになります。
まとめ
固定資産税は事業に関わる経費であり、勘定科目は「租税公課」で処理するのが基本です。計上のタイミングは、原則は賦課決定ベースですが、実務上は支払日ベースも認められており、継続性を守ることが何より大切です。
大阪市内の事業所でも「自宅兼事務所の固定資産税の按分を忘れていた」という声をよく耳にします。特に、自宅兼事務所として使っている場合は、居住部分と事業部分を正しく按分することが重要です
もし固定資産税の処理方法に迷われた場合や、実務的にどう仕訳すべきか不安を感じる場合は、ぜひ当事務所までご相談ください。地域に根ざした税理士として、貴社の実情に合った最適なアドバイスをさせていただきます。

著者紹介
「小さな会社と個人事業主の専門税理士」、吉川拓税理士事務所の吉川です。
10年以上にわたり、小規模事業者や個人事業主の皆さまを税理士としてサポートしてきました。
現在大阪市で開業しています。
会計や税金が苦手な方にも、専門用語を使わず分かりやすく、親身に寄り添うことを心がけています。
趣味はトイプードル、コーヒー、読書。お気軽にご相談ください。