Zoom利用料の勘定科目と仕訳を徹底解説|通信費・会議費・雑費の判断基準と注意点

リモートワークやオンライン会議が一般的になり、Zoomを利用する企業や個人事業主は年々増加しています。無料プランを使う場合もありますが、ビジネスの現場では有料プラン(プロ、ビジネスなど)を契約するケースが主流です。そこで悩ましいのが「Zoom会費をどの勘定科目で処理すればいいのか?」という点です。通信費?会議費?それとも雑費?さらに、年間契約をした場合の会計処理や消費税対応でも間違いやすいポイントがあります。
本記事では、大阪市の税理士事務所として実務で感じていることや、実際にお客様からよく質問される内容を踏まえて、ズーム会費の勘定科目や仕訳方法を分かりやすく解説します。
目次
Zoom利用料の勘定科目と仕訳の基本
Zoomの有料プランは、月額課金または年間契約で支払う形式です。実際の現場では以下の勘定科目が使われることが多いです。
- 通信費
Zoomはインターネット経由で提供されるクラウド型サービスであるため、通信費として処理するのがもっとも分かりやすいです。他のクラウドサービス(Microsoft 365、Chatwork、Slackなど)と同じ勘定科目に揃えることで、決算書の見え方がスッキリします。 - 会議費
Zoomは社内外の打合せの両方で利用されます。勘定科目として「会議費」を選択できなくはありませんが、社内ミーティングだけでなく幅広く利用するため、通信費で処理しておく方が汎用性が高く、実務上は管理もしやすいです。 - 雑費
利用頻度が少なく金額も小さい場合でも、原則としては通信費など適切な科目で処理するのが望ましいです。ただし、他の科目に当てはめにくい場合には、やむを得ず「雑費」で処理することもありますが、あくまで例外的な対応と考えるのが安心です。
実務での仕訳例
- 例:月額2,549円(税込)をクレジットカード払いした場合
借 方 | 消費税区分 | 金 額 | 貸 方 | 消費税区分 | 金 額 |
---|---|---|---|---|---|
通信費 | (課税仕入) | 2,549 | 未払金 | (不課税) | 2,549 |
※年間契約については下記「年間契約の処理と前払費用の扱い」で解説
会社規模や利用目的と他クラウドサービスとの統一性
1. 小規模事業者の場合
フリーランスや小規模法人では、会計処理をシンプルにするために「通信費」で一括処理するのが一般的です。毎月数千円のZoom会費をいちいち用途別に分けるよりも、通信費にまとめた方が管理がラクになります。
2. 中小企業の場合
部署ごとに利用目的が明確であれば「会議費」として処理することも考えられます。ただし、会議費で処理すると「会議飲食代」などと同じ科目に混ざるため、かえって不自然に見える場合もあります。銀行や税務署から決算書を見られることを意識すると、通信費に統一した方が無難です。
3. 他クラウドサービスとの統一性
実務でよくあるのは「Zoomは会議費、Microsoft 365は通信費、Chatworkは雑費」といったバラバラの処理です。これでは決算書が雑多に見えてしまい、経営管理もしにくくなります。
たとえば当事務所の顧問先でも、以前はクラウドサービスごとに科目を分けていましたが、「クラウドサービス=通信費」とルールを決めたことで会計データの見やすさが格段に向上しました。銀行融資の際も「この会社は費用の整理がきちんとできている」という印象につながるため、処理の統一は意外と重要です。
年間契約の処理と短期前払費用の特例・消費税対応
年間契約の処理と前払費用の扱い
Zoomの会費を年間契約で支払った場合、その支払額を一括で当期の経費とするのは原則認められません。契約期間が翌期以降にまたがるため、本来は「前払費用」として資産計上し、利用期間に応じて費用化していく必要があります。
ただし、税務上は「短期前払費用の特例」という取り扱いがあります。この特例を適用できる場合には、支払時に全額をその期の経費とすることが認められます。
短期前払費用の特例とは
短期前払費用の特例とは、次の条件を満たす支払いについて、支払時に全額を経費とできる制度です。
- 1年以内に提供を受けるサービスの対価であること
- 毎期継続して同じ処理を行うこと
Zoomの年間契約もこの条件を満たすため、特例を適用すれば支払時に全額を経費化できます。
仕訳例(短期前払費用の特例を適用する場合)
- 例:Zoom年額24,000円(税込)をクレジットカードで支払った場合
借 方 | 消費税区分 | 金 額 | 貸 方 | 消費税区分 | 金 額 |
---|---|---|---|---|---|
通信費 | (課税仕入) | 24,000 | 未払金 | (不課税) | 24,000 |
消費税処理について
Zoom会費は課税仕入として処理できます。
ただし注意点は インボイス(請求書)の保存が必須 だという点です。
実務でよくある誤りは「クレジットカードの利用明細だけを保存している」ケースです。これでは仕入税額控除の要件としては不十分です。Zoom公式サイトから請求書をダウンロードし、PDFで保存しておくことが必要です。
当事務所でも、顧問先の方から「カード明細しか残していなかったが大丈夫か?」と相談を受けたことがあります。その際は、過去分の請求書をマイページから再取得して整理することで対応できました。こうした対応は、まさに実務の現場でありがちなつまずきの一つです。
まとめ
Zoom会費は「通信費」として処理するのがもっともスムーズで、他のクラウドサービスと勘定科目を統一しておくと決算書の見やすさも向上します。年間契約をした場合には「前払費用」と「短期前払費用の特例」の違いを意識して仕訳を行いましょう。また消費税の仕入税額控除のためには、クレジットカード明細ではなく、Zoom公式の請求書(インボイス)を保存することが大切です。
当事務所(大阪市)では、クラウドサービス利用に伴う会計処理やインボイス対応についても多数のご相談をいただいております。Zoom会費やクラウドサービスの仕訳で迷った際は、お気軽にお問い合わせください。

著者紹介
「小さな会社と個人事業主の専門税理士」、吉川拓税理士事務所の吉川です。
10年以上にわたり、小規模事業者や個人事業主の皆さまを税理士としてサポートしてきました。
現在大阪市で開業しています。
会計や税金が苦手な方にも、専門用語を使わず分かりやすく、親身に寄り添うことを心がけています。
趣味はトイプードル、コーヒー、読書。お気軽にご相談ください。