親族から事業資金を借りたときの税務リスクと会計処理

親族から事業資金を借りたときの税務リスクと会計処理

事業を始めたばかりのタイミングや、資金繰りが厳しいときに「親からお金を借りる」というケースはよくあります。大阪の経営者や個人事業主の方からも「親族から借りたお金は贈与税の対象にならないか?」「仕訳と勘定科目はどうすればいいのか?」といったご相談を多くいただきます。
本記事では、親族から事業資金を借りたときに押さえておくべき税務と会計処理のポイントを、税理士の現場感覚を交えて解説します。

借りた側にかかる税金のポイント

無利息で借りた場合の贈与税リスク

親族から無利息でお金を借りると、本来支払うべき利息を得したと考えられ、その分が「贈与」とみなされる可能性があります。

ただし、贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、無利息による利益とその他の贈与額を合計して110万円以下であれば、贈与税は課されないこととなります。

税務署のチェックポイント

税務署は「本当に返済意思があるのか?」を重視します。

  • 曖昧な約束(「ある時払い」「出世払い」など)は贈与扱いになるリスク大
  • 返済実績がない場合も、贈与と見なされる可能性あり

実際、大阪の個人事業主の方で「母親から借りたお金を返さずに放置していた」というケースがありました。後日の税務調査で指摘されるリスクを避けるため、契約書を整備し返済計画を実行することになりました。

貸付と贈与を区別するために必要な契約書

国税庁のタックスアンサー(No.4420)でも示されている通り、親族間の貸し借りは契約書と返済実績が重要です。

親から金銭を借りた場合

概要
親と子、祖父母と孫など特殊の関係がある人相互間における金銭の貸借は、その貸借が、借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません。

贈与として取り扱われる場合
しかし、その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。
なお、実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や「ある時払いの催促なし」または「出世払い」というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます。

国税庁:No.4420 親から金銭を借りた場合

実務でやるべき対応

  • 金銭消費貸借契約書を作成する
  • 利息の有無・返済期間を明記する
  • 契約書に署名押印をし、実際に返済を行う
  • 振込や通帳記録など、返済の証拠を残す

たとえ無利息であっても、「無利息である」ことを契約書に明記しておく必要があります。ただし、契約書に無利息であることを明記しても、税務上は利息相当額が贈与とみなされる可能性がある点には注意が必要です。

事業資金として借りた場合の会計処理

1. 借入金の計上

親族から借りた資金は、事業用であれば借入金(負債)として計上します。贈与ではなく借入であることを明確にするため、会計帳簿にきちんと記録しておくことが大切です。

  • 仕訳例
借 方金 額貸 方金 額
長期借入金2,000,000普通預金2,000,000

※返済期限が1年を超える場合は長期借入金として処理します。

2. 利息の処理

利息あり → 支払利息として経費処理

無利息 → 会計上は仕訳不要。ただし税務上の贈与税リスクには注意

  • 仕訳例
借 方金 額貸 方金 額
支払利息1,500普通預金1,500

3. よくある間違い

  • 借入金を「事業主借」で処理してしまう
  • 返済があっても帳簿に反映していない
  • 利息を設定したのに支払忘れで処理漏れ

大阪の中小企業の例で「父親からの借入を元入金扱いにしていた」というケースもありました。これは誤った処理で、当事務所が正しい仕訳に修正対応しました。最初から正しい仕訳をしておくことが安心につながります。

まとめ

親族から事業資金を借りることはよくあることですが、契約書の未整備・返済の不履行・仕訳の誤りといった小さなミスが、税務調査で贈与と見なされるリスクにつながります。
当事務所(大阪市)では、借入時の会計処理から税務調査対策まで一貫してサポート可能です。
「親族からの借入をどう処理すればいいか不安」「贈与税のリスクを避けたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。