【個人事業主向け】寄付金は経費になる?仕訳の考え方と注意点を解説

「困っている人の役に立てれば…」という思いで行う寄付。
しかし、個人事業主としては「これって経費にできるの?」という疑問がつきもの。今回は、寄付金の仕訳の考え方と実務上の注意点を、会計事務所の目線でわかりやすく解説します。
目次
寄付金は経費になる?基本のルールを確認
個人事業主が寄付金を支出した場合は経費にできません。なぜなら税法上の「必要経費」とは、売上を生むための支出を意味するからです。このため寄付金を支払った場合は個人的な支出となり事業上の経費にはなりません。
例えば、
- 日本赤十字社への義援金
- 認定NPO法人への寄付
- 学校・寺社への寄付 など
これらは社会貢献として尊いものですが、売上や利益に直接つながる性質ではないため、税務上は「経費ではない支出」として扱われます。
✔ 控除として扱えるケースも
ただし、確定申告時に「寄付金控除」として申告できるケースがあります。
対象になる寄付先の例:
- 国・地方公共団体
- 公益財団法人・公益社団法人
- 認定NPO法人に対する寄付金のうち一定のもの など
このような場合、支払った寄付金は所得控除として処理し、税負担を軽くすることが可能です(ただし上限あり)。また一部の寄付金は税額控除を選択することができます。
個人事業主の寄付金の仕訳はどうする?
では、実際に寄付を行った場合の会計上の処理(仕訳)はどうなるのでしょうか?
【仕訳例】地方公共団体へ5,000円を預金口座から寄付した場合
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
事業主貸 | 5,000 | 普通預金 | 5,000 |
事業とは関係ない支出として処理するため、事業主貸(じぎょうぬしかし)という勘定科目を使います。
※事業とは関係がない支出のため現金で支払った場合などは基本的に記帳する必要はありません。
事業主貸とは?
🔸「事業主貸」は、プライベート支出など、経費にしない支出に使う勘定科目です。
寄付金の所得控除・税額控除の計算式
寄付金の所得控除と税額控除は、どちらも確定申告時に税負担を軽減する制度ですが、仕組みが異なります。以下に、それぞれの基本的な計算式を記載します。
【所得控除】の計算式
計算式:
所得控除額 = 寄付金の合計額 − 2,000円(※)
※ただし、総所得金額等の40%相当額が限度
特徴
- 所得から差し引く(課税所得を減らす)
- 節税効果は「所得税率」に依存
【税額控除】の計算式
計算式:
税額控除額 =(寄付金額 − 2,000円)× 40%
※ただし、所得税額の25%相当額が限度
特徴
- 所得からではなく、直接「税額」から引かれる
- 節税効果が大きい
✅ どちらを選ぶべき?
- 所得控除と税額控除の両方が選択可能な場合は、税額控除の方が有利なケースが多いですが自身の所得金額により変わりますので比較が必要です
- 税額控除は認定NPO法人など、対象が限られるため確認が必要
- 所得控除と税額控除は片方しか選べないので注意
税務調査で見られるポイント
実際の現場では、「経費で落としていいですか?」という質問をよくいただきます。
特に年末年始や災害時は、寄付が増える時期であり、善意の支出であっても経費にならないという説明に驚かれる方もいらっしゃいます。寄付金などを支払った場合は下記の内容に注意しておきましょう。
🔍 税務調査でよくチェックされる点
- 勘定科目が「寄付金」や「広告宣伝費」になっていないか
- 事業主貸できちんと処理ができているか
まとめ
寄付金は、個人事業主の場合は経費になりません。
経費で会計処理してしまっていないか確定申告前には必ずチェックしておきましょう。