初めての決算でつまずくポイント―「これ、自分でやるべき?」と迷っている方へ―

決算・申告をどうするか

初めて決算を迎える方からの相談で、いちばん多いのは、

「どこまで自分で続けて、どのタイミングで税理士に頼むべきか分からない」

というものです。

ネットを見ると、

  • 「年商○円までなら自分でできる」
  • 「freeeやマネーフォワードなら簡単」

といった情報はたくさん出てきます。

ただ、実際に決算前後の帳簿を一緒に見ていくと、
判断の分かれ目は“年商の金額”や“ソフトの種類”ではない、
と感じる場面が非常に多いです。

むしろ問題になりやすいのは、

処理自体は進んでいるが、根拠を持って整理できているかどうか

という点です。

今日は、初めての決算で実務上よく見かける、
「ここで一気に迷いやすい」というポイントに絞って、
私の視点で整理してみます。

①「売上は合っているはず」という思い込み

まず、かなり多いのがここです。

売上は会計ソフトに入れているし、
通帳とも合っているから大丈夫だと思っています。

たしかに、
・現金商売ではない
・請求書ベースで管理している
こういう場合、合計金額だけ見れば大きなズレが出ていないこともあります。

ただし、ここは注意が必要です。

決算で問われるのは
単なる売上の合計ではなく、
「いつの売上なのか」が正しく切り分けられているかです。

たとえば

  • 12月末に仕事は終わっているが、請求は1月
  • 入金はまだだが、実質的には今年の売上
  • 逆に、前受けで入金しているが、仕事は来期

こうした場面になると、
それまで順調に入力できていた方でも、
どのタイミングで売上計上すべきか判断に迷うケースが非常に多いです。

年商300万〜800万円くらいの個人事業主でも、
ここで処理が止まってしまうことは珍しくありません。

正直、
「入金=売上」として現金ベースで処理を進めてしまう人はかなり多いです。

そしてこれは、
たとえ最終的な売上合計が大きくズレていなかったとしても、
決算の数値としては間違えてしまっているため見過ごせないポイントです。

私の感覚では、ここで大切なのは

自分で売上計上の基準を理解し、継続して正しく処理できるか

です。

一度きり偶然合っている状態と、
根拠を持って毎期同じ基準で処理できる状態では、
決算の安定度がまったく変わってきます。

もしこの時点で
「なんとなく入金ベースで入れている」
「来年も同じ判断ができる自信がない」

と感じる場合は、
決算前に一度立ち止まって整理しておく価値は大きいと思います。

② 経費は入れている。でも「正しく処理できている」とは限らない

次につまずきやすいのが経費です。

「経費は全部入っています」と言われることは多いのですが、
実際に中身を確認すると、入力はされていても処理が正確でないケースが少なくありません。

よくあるのは、たとえば

  • 勘定科目がなんとなくで選ばれている
  • クレジットカードの未払金残高がズレている
  • 消費税区分が実態と合っていない

特に消費税区分は、
日々の入力では見落とされやすいポイントです。

たとえば

  • 課税仕入と対象外の取り違え
  • 輸入取引の区分誤り
  • 売上側の課税・不課税の混在

このあたりは、帳簿の数字自体は一見整って見えるため、
決算直前まで問題に気づかないことも珍しくありません。

さらに、決算特有の処理も別途出てきます。

たとえば

  • まだ払っていない外注費・通信費
  • 年払いしているサブスクや保険
  • 10万円以上のパソコンや設備

ここまで含めて適切に処理ができた状態で初めて、
「決算として整った経費」になります。

実務の感覚として、

  • 個人事業主で年商300万前後
  • 取引先がシンプル
  • 決済手段が少ない
  • 消費税の免税事業者

このあたりなら、自分で整理し切れる方もいます。

一方で、

  • 年商1,000万を超えてきた
  • クレカ・引き落とし・海外取引が増えている
  • 消費税の課税事業者(インボイス登録)になった

この段階に入ると、
“入力はしているが、正確性の担保が難しくなる”方が一気に増えます。

正直、ここで無理に自力完結しようとして、
後からまとめて修正…という流れになるケースはかなり多いです。

③ freeeやマネーフォワード、弥生会計などクラウド会計ソフトに任せきり

最近は、クラウド会計ソフトの性能がかなり上がっています。

銀行やクレジットカードを連携すれば、
自動で仕訳候補が出てきて、
「思ったより簡単に入力できた」という方も多いです。

ここまでは、とても良い流れです。

ただ実務上、もう一歩踏み込んで見ていくと、
“処理できているつもり”のまま決算直前まで進んでしまうケースが少なくありません。

よくあるのは「自動=正しい」という思い込み

クラウド会計は便利ですが、
あくまで入力を補助するツールです。

たとえば、

  • 自動提案された勘定科目をそのまま確定
  • 似た取引をまとめて一括登録
  • 前回と同じルールで機械的に処理

こうした流れ自体は珍しくありません。

ただ、その結果として

  • 本来は売掛金なのに売上即入金で処理
  • 立替経費なのに単純な経費計上
  • クレジット利用なのに現金払い処理

といったズレが、静かに積み上がっていきます。

正直、ここはソフトが悪いわけではなく、
自動化の便利さが裏目に出やすいポイントです。

残高が合っていないのに、そのまま決算へ

もう一つ、かなり多いのがここです。

決算前に確認すると、

  • 現金残高が実際と合っていない
  • 預金残高が通帳とズレている
  • 売掛金が回収済みなのに残っている
  • 未払金(クレジットカード)が膨らんだまま

という状態になっていることがあります。

日々の入力はできていても、
残高の整合性チェックが抜けているパターンです。

クラウド会計は画面上きれいに数字が並ぶため、
違和感に気づきにくいのも特徴です。

私なら、ここを必ず確認します

クラウド会計を使っている場合、
私が最低限チェックしてほしいと思うのは次の点です。

  • 現金・預金の残高が実際の残高と一致しているか
  • 売掛金が「回収予定のものだけ」になっているか
  • 未払金(特にクレジット)が支払予定額と一致しているか
  • 社会保険料や源泉所得税の預り金の残高が実際の残高と一致しているか

ここが説明できる状態なら、
少なくとも帳簿の最低限の整合性はひとまずクリアできていると言えます。

逆に、

  • 数字は出ているが根拠が説明できない
  • 残高が合っていない
  • 自動登録に任せたまま見直していない
  • 消費税区分について理解していない

このどれかに当てはまる場合は、
一度どこかのタイミングで立て直しておくのが安全です。

正直、ここで一度整えておくかどうかで、
翌期以降の帳簿のしんどさが大きく変わってきます。

④ 青色申告=65万円控除がもらえる、と思っている

これも本当によくある誤解です。

青色申告を出せば
自動的に65万円控除、ではありません。

  • 帳簿の形式
  • 決算書の内容
  • 期限内申告かどうか

このあたりが揃って、はじめて満額になります。

実務では

「とりあえず青色で出しました」

という状態のまま申告されていて、
ご本人は65万円控除のつもりになっているケースもあります。

青色申告を出している=自動的に65万円控除、ではありません。

実際には、形式要件を満たしておらず、
結果として10万円控除の扱いになることもあります。

ここは
自分でやるか、税理士に頼むかの分かれ目になりやすいポイントです。

65万円控除をきちんと取りにいくなら、
決算書の中身まで理解している必要があります。

逆に言えば、
「控除は減ってもいいから、自分で完結させたい」
という考え方も、選択としてはアリです。

⑤ 決算が「作業」になった瞬間に危ない

相談を受けていて感じるのは、
決算を“作業”として片づけようとした瞬間に、ミスが増えるということです。

  • とにかく期限に間に合わせたい
  • 数字が合えばいい
  • 今年は忙しかったから仕方ない

気持ちは分かります。

でも決算は、
「今年どういう事業だったか」を
数字で説明する作業でもあります。

ここを飛ばすと、

  • 税額がなぜそうなったのか分からない
  • 来年、同じことでまた悩む
  • 税理士に相談するときも説明できない

という状態になりがちです。

正直、
ここで一度つまずくと、次の年もずっとしんどくなります。

私なら、ここで判断します

「自分でやるか、税理士に頼むか」

この相談は本当に多いのですが、
私なら、次のような視点で一度立ち止まって考えます。

  • 売上や経費の計上基準を、自分の言葉で説明できるか
  • 現金・預金・売掛金・未払金・預り金などの残高が、根拠を持って一致していると言えるか
  • 消費税区分や決算整理について、理由付きで判断できているか
  • 来年も同じ精度で帳簿を回せるイメージがあるか

どれか一つでも
「正直、ここは自信がないかも」と感じる部分があるなら、
決算のタイミングで一度専門家と整理しておく価値はあると思います。

当事務所では顧問契約という形で、

「自分で入力は続ける前提で、判断の軸を一緒に整え、仕訳内容をチェックする」

という関わり方をしています。

初めての決算は、
完璧に仕上げることよりも、

どこで判断に迷ったのかを把握しておくこと

の方が、実務上はずっと重要です。

その引っかかりが見えてくると、
「来年も自分で回すのか」
「どこから税理士に任せるのか」

このあたりの判断もしやすくなってきます。